葬儀社選びと見積りチェック術

葬儀社はどうやって選べばいいの?

大事な家族が亡くなるのは悲しいですが、誰しもが経験するできごとの1つです。
多くの方は身内が亡くなってから慌てて葬儀のことを調べ、情報不足のまま葬儀社を決めています。
後悔しても葬儀のやり直しはできません。納得のいくものにするため、時間の余裕があるうちから葬儀社選びをしたいですね。

どこに葬儀を依頼したらいい?

葬儀の依頼先には、大きく分けて葬儀社・農協・冠婚葬祭互助会がありますが、約7割の人が葬儀社を利用しています。
農協の葬儀はJA(農業協同組合)組合員のために提供している葬儀で、原則として組合員であること、または一定の条件を満たしていることが利用条件になります。

冠婚葬祭互助会は、事前に毎月一定額を積み立てることで契約額に応じた冠婚葬祭のサービスを受けられます。
どちらも余裕をもって準備をする必要があるため、葬儀社に依頼する人が圧倒的に多いのです。

どの葬儀社を選べばいいの?

近年はインターネットで情報収集をし、生前に自分で葬儀社選びを行う人も増えているようです。しかし、ホームページをいくつ見てもどこがいいのか悩みますよね。
見分け方のコツとしてまず見積もりを取ることをおすすめします。

葬儀社になるには許認可や届出が不要なため誰でも葬儀社を名乗ることができます。
法律やガイドラインも統一されておらず、各社の判断で料金設定ができるので想定外の費用や内容に驚く可能性もあります。
価値観に合った葬儀を選ぶために必ず複数の葬儀社から見積もりをとって比べてください。一番のポイントは、必要な項目がすべて見積書に書かれているかどうかです。

最低限「臨終から安置」・「通夜」・「葬儀と告別式」・「火葬」の流れに沿って必要な項目が記載されているか、飲食接待費や返礼品は想定人数と合っているか、プラン以外の追加代金が明確に書かれているかもチェックしましょう。
※葬儀の内容と費用相場について、詳しくは「お葬式の内容とそれぞれの費用」をご覧ください。

分かりにくい見積もりや、「一式」とまとめている場合は何が含まれているのかしっかりと確認してください。専門用語を多用した説明や、曖昧な回答しか得られないようであれば、その葬儀社への依頼は避けたほうがよいでしょう。

葬儀社選びチェックシート
内容 補足 チェック欄
ホームぺージや資料がわかりやすいか 葬儀の費用・内容は素人にわかりにくいものだけに、明快に書かれているべき
事前相談・見学が可能か 下見することで葬儀社の雰囲気が分かる。見学不可であれば候補から外す方がよい
見積書の金額や内容が明確か 一式とまとめている項目が多い、内訳が書かれていない場合は要注意
店舗や事務所を構えているか きちんと店舗があり住所や電話番号がはっきりしていることは、1つの信頼の目安になる
担当者が次々と変わらないか 引き継ぎ不足・連絡ミスにつながる可能性がある
一方的に話を進めていないか 丁寧に話を聞き、希望に寄り添った提案をしてくれるか
大幅な値引きをしていないか 見積もりから不自然な値引きがあれば、事前に不当な金額を上乗せしている可能性がある
アップグレードを強要しないか 望んでいないのに高く豪華な祭壇・棺などをすすめてくるのは信頼できる葬儀社とは言えない

 

一般的な通夜・葬儀・初七日法要の流れ

お通夜・葬儀・初七日までの流れ

家族が亡くなり、死亡診断書の依頼や関係者への連絡を終えると、お通夜・葬儀と手配は続いていきます。葬儀は宗教だけでなく地域によっても内容が異なりますが、ここでは一般的に行われる通夜から初七日までの流れと内容についてお伝えします。

亡くなった後に行う最初のケア

臨終後にまず行うのが「末期の水」です。
お葬式における最初の儀式とも言われており、臨終に立ち会った全員が水を含ませた脱脂綿で故人の唇を湿らせるのです。この儀式には喉を潤して安らかに旅立ってほしいという願いが込められています。
末期の水のあとは遺体を綺麗に拭き、衛生的処理、着替え、死化粧を施します。病院では看護師が行いますが、自宅の場合は訪問看護師や葬儀社にお願いすることができます。
ケアを終えたらお通夜・葬儀を自宅で行うか、斎場で行うかを葬儀社と相談しましょう。菩提寺があれば連絡し、お坊さんを迎えて枕経を上げてもらった後、お通夜と葬儀の日程も相談するといいでしょう。

お通夜とは?

お通夜は告別式の前日に遺族や親しかった人が集まり、故人と最後の夜を共に過ごしゆっくりと別れを惜しむ時間です。
近年、全国各地に関係者が散らばっていることもあり何日も滞在することが難しく、お通夜のみ参列する人が多くなりました。
通夜の後、会葬者や僧侶を軽い食事と酒でもてなす「通夜ぶるまい」があります。
僧侶が通夜ぶるまいに参加しないとき、「御膳料」(5000円~1万円程度)をお布施と一緒に包むこともあります。

葬儀・告別式~火葬

お通夜は一般的に夕方から夜に行い、翌日に葬儀と告別式を行います。
告別式のあとは火葬場に出棺し(このとき埋火葬許可証が必要になります)、拾骨(骨揚げ)をして葬儀は終了となります。一般的に火葬は遺族と近親者のみで行われます。

<葬式と葬儀の違いは?>

葬式と葬儀を同じように思う方も多いですよね、葬式はお通夜・告別式・火葬をすべて合わせたものをいいます。
葬儀は、告別式をさしています。

初七日法要を火葬後に行うことも!

初七日は亡くなってから7日目に行う法要ですが、近ごろは何度も親族が集まることが難しいため「繰り上げ初七日法要」を行うケースが増えています。
火葬後にもう一度葬儀会場へ移動して初七日の法要を(繰り上げて)行うのです。

また、一昔前は四十九日までの間は精進料理を食べる習わしがあり、その後精進料理から通常の食事に戻すため「精進落とし」を行っていました。現在では僧侶や会葬者をもてなす意味合いが強くなり、火葬後に繰り上げ初七日法要と続けて行うことも増えました。

変わりゆく葬儀のかたち

スタンダードな仏式の葬儀のほかに、家族だけで葬儀を済ませる「家族葬」を行い、のちに関係者を招いて「お別れ会」を開く方も増えました。
また、「直葬」と言って亡くなった先から火葬場に直行し、身内だけで火葬を行う形式もあります。色々な形式があるので、葬儀社に相談して納得のいくものを選べるといいですね。

遺体の搬送から初七日までの流れ 内容 備考
遺体の搬送 遺体を病院や自宅や斎場などに搬送  
遺体の安置 遺体を安置し、僧侶を迎えて枕経を上げてもらう 枕元に枕飾りをする
(葬儀社にお願いすれば用意してくれる)
納棺 遺族で力を合わせて遺体を棺に納める 愛用品も一緒に入れる
お通夜 葬儀後、遺族・近親者・会葬者の順で焼香 通夜ぶるまいも行う
葬儀・告別式 葬儀後、遺族・近親者・会葬者の順で焼香  
出棺 近親者で力を合わせて棺を霊柩車に納める  
火葬 遺体を火葬し、拾骨(骨揚げ)後、喪主は遺骨を納めた骨壺を受け取る 喪主は火葬場に到着したらすぐ係員に「埋火葬許可証」を渡す
初七日法要 死後7日目の法要 繰り上げて火葬後に行うことも
精進落とし 四十九日の忌明けに精進料理から通常食に戻す 繰り上げて火葬後に行うことも

 

お葬式の内容とそれぞれの費用

一昔前までお葬式の費用は高く、内容もよくわからないものでした。今は多くの葬儀社がいろいろなプランを用意し、ホームページなどで情報発信を行うようになりました。

利用者の選択肢は増えましたが、今度は情報が多すぎるのが問題です。
そこで、この記事では一般的な葬儀費用とその内訳についてまとめました。予算組みやプラン選びの参考になりましたら幸いです。

お葬式はいくらかかるの?

日本消費者協会のアンケートによると、お葬式にかかる費用の全国平均は約195万円となっています。
最近では、お葬式のスタイルが多様化しているため費用も大きく異なりますが、ここでは一般的なお葬式について紹介します。

費用は大きく分けて4つです。

  1. 葬式費用…祭壇、祭具、斎場、人件費、霊柩車など葬儀社に支払うもの
  2. 飲食接待費…通夜ぶるまい、お清め、精進落とし、返礼品など料理店(あるいは葬儀社)に支払うもの
  3. お布施…読経料、戒名料、御車代などお寺に渡すもの
  4. その他…火葬費、香典返しなど

<葬式費用について>

祭壇と棺のランクで費用は大きく変動するので、総予算を事前に決めておき、その範囲内でこだわるところと減らすところを調整しましょう。

<飲食接待費について>

人数によって費用が大きく異なるので、見積もりでは人数設定にも気を付けましょう。葬儀社が立て替え、葬儀費用とまとめて支払うこともあります。

<お布施について>

地域や宗派によって異なるので、わからない場合は葬儀社、同じ菩提寺の檀家さん、お寺の事務局または僧侶に過去のお布施の金額を聞いてみましょう。

<その他費用について>

その他費用の中の「香典返し」について触れたいと思います。
お葬式には参列者が持参する「香典」があり、故人の霊前に供える線香や花の代わりになる金銭です。遺族の金銭的負担を減らす意味も含まれています。この香典を頂いたお礼となるのが「香典返し」です。
一般的に頂いた金額の半額程度の品物をお返ししますが、品物選びに悩んでしまう場合はカタログギフトを送り、相手に選んでもらう方法がおすすめです。
近頃は香典の額にかかわらず3000円程度の品物をお渡しする「即日返し」が主流になっており、葬儀社に手配してもらうこともできます。

4項目の平均額
項目 内容 費用の目安
葬式費用 祭壇、祭具、斎場、人件費、霊柩車など 約121万円
飲食接待費 通夜ぶるまい、お清め、精進落とし、返礼品など 約30万円
お布施 読経料、戒名料、御車代など 約47万円
その他費用 火葬費、香典返しなど 火葬…約5万円
香典返し…2000~3000円×人数

※各項目は平均金額です。各項目の合計額と総費用の平均額は一致しません。

葬儀社への支払いはいつ?

葬儀社への支払いは葬儀後に現金一括で支払います。
現在はクレジットカード払いやローンの利用、保険金が下りた後に払うことが可能な葬儀社も増えているので、事前に葬儀社に確認しましょう。

金額が大きいので、故人の口座から葬儀費用を捻出したいと思う方もいますよね。
死後、故人の口座は凍結されるため、これまでは遺産分割協議がまとまるまで引き出しはできませんでした。しかし、2019年7月1日から「預貯金の仮払い制度」が創設され、遺産分割協議がまとまる前でも最大150万円が故人の口座から引き出しできるようになりました。

葬儀にかかる費用の目安
項目 内容と費用
お迎え~安置 ・寝台車(10kmまでの場合)…2~4万円程度(ドライアイス・人件費含む)
・安置料金(施設料)…1日あたり3000円~2万程度
・安置料金(ドライアイス)…1日あたり1万円程度
納棺 ・棺の費用…2万円~200万円程度(素材や加工方法により費用が異なる)
・湯潅(ゆかん)…5万円~10万円程度(依頼した場合のみ)
通夜 ・会場費(葬儀と合わせて)…20万円程度
・祭壇…30万円~120万円程度(種類・規模で大きく異なる)
・生花・供物…3~5万円程度
・通夜ぶるまい飲食費…1人あたり2000~3000円程度
・返礼品…1人あたり1000円程度
・葬儀社の人件費
 司会…5万円程度(葬儀と合わせて)
 その他スタッフ…1人あたり2万円程度
告別式 ・会場費(葬儀と合わせて)…通夜に含む
・葬儀社の人件費…通夜に含む
・返礼品…1人あたり1000円程度
・会葬礼状…1人あたり100円程度
・精進おとし飲食費…1人あたり4000円~5000円程度
火葬 ・霊柩車(10kmまでの場合)…1万3000円~5万円程度
・火葬費…5万円程度
・火葬場休憩室使用料…2万円程度
・骨壺代金…1000円~7万円程度(材質・大きさ・デザインによる)
寺院 ・お布施(読経料・戒名料含む)…40万円前後
・初七日法要のお布施…3万円程度
その他費用 ・香典返し…1人3000円程度
・白木位牌…2000~3000円程度
・遺影代金…1~3万円程度
・心づけ…
 火葬場の係員の場合3000円~5000円程度
 寝台車・霊柩車の運転手の場合2000円~5000円程度

 

 

この記事を担当した司法書士

トラスティ藤沢司法事務所

代表

山脇和実

保有資格

司法書士、宅地建物取引士

専門分野

相続・遺言・生前対策・民事信託・不動産売買

経歴

司法書士事務所での10年の経験を経て独立し、トラスティ藤沢司法事務所の代表を務める。「相続は、亡くなった方の思いを推し量ろう」、「相続は、和をもって尊しとなすが大事」、「完全無欠な平等は不可能、遺産分けは互譲が必要」をモットーに、依頼者の内にある悩み要望を推し量り、顧客満足に繋がるよう努めている。また、勤務時代を含めて担当した相続・売買案件は3000件以上に上り、相談者からの信頼も厚い。


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