遺言は何歳から書けるか
皆さまは、遺言はいつから書けるかご存知でしょうか?
遺言をいつから残せるかというのは民法961条で定められています。
「15歳に達した者は、遺言をすることができる。」
契約などを行う際に必要とされる通常の行為能力である20歳より年齢が下がっています。
遺言というのは、できるだけ遺言者の最終の意思を尊重しようという制度ですので、遺言の意味さえわかる年齢であれば、通常の行為能力(20歳)までは必要なく、15歳という年齢が定められています。(15歳などの年齢は財産などがないため死後の自分の希望を残すことが多くあります)
遺言書は何歳から書くべきなのか?
遺言は15歳から残すことが出来るとはいえ、実際には平均として何歳ぐらいの方が書いているのか?
当事務所で実際に遺言書作成を依頼された方の年齢をグラフで表してみました。
当事務所の遺言書作成平均年齢は76歳!?
上記のグラフから、遺言を作成した年齢が80代の方が最も多く、
さらに4割以上が70代以下の方です。
平均年齢は76.3歳と、80歳を下回ることが分かりました。
年齢層別の遺言作成の具体的な理由
10代、20代
・死後の自分の希望を書く
30代、40代
・死後の自分の希望を書く
・結婚はしているが子どもはいないため配偶者のために書く
50代
・結婚はしているが子どもはいないため配偶者のために書く
・子どもはおらず、両親や配偶者ではなく甥・姪に渡したい
60代
・結婚はしているが子どもはいないため配偶者のために書く
・特定の子どもに遺産を渡したい
・離婚を考えており、子どもに遺産を渡したい。
70代
・特定の子どもに遺産を渡したい。
・子のない夫婦。特定の兄弟姉妹に遺産を渡したい。
・世話になった甥・姪に相続させたい。
・相続人である姉妹に遺産を渡したくない。
・先妻との子がいるので、後妻とその子どもに相続させたい。
・子のない夫婦。配偶者に遺産を渡したい。
80代
・面倒を見てくれている親族に遺産を渡したい。
・特定の子どもに遺産を渡したい。
・子ではなく孫に財産を引き継がせたい。
・世話になった甥・姪に遺産を渡したい。
・子のない夫婦。特定の兄弟姉妹に遺産を渡したい。
・一部の遺産を特定の子どもに渡したい。
90代
・遺産分割で面倒になる子がいる。
・重病を煩った際に前夫との子がいることが明らかになった。
・世話になった甥・姪に遺産を渡したい。
上記のように様々な理由はありますが配偶者に遺産を渡したい(子どもがいない場合)や特定の方に遺産を渡したいというような理由が多くあります。
遺言書はいつでも書けるわけじゃない!
遺言を書くというのは現役で働かれている方には無縁なことと考える方も少なくないでしょう。
しかしその考え方は変わりつつあるのかもしれません。
タイミングというのは個人によるものかもしれませんが、人生の節目に合わせて作成するのが一般的です。
人生の節目とは具体的に、
・就職
・結婚
・家の購入
・出産
・退職
・配偶者をなくした時
なぜ上記のようなタイミングで遺言書を残すのかというと、
結婚や出産などのタイミング
「相続関係が大きく変わる」ため遺言書を残す方が多い傾向にあります。
・子供がいない場合は配偶者のみならずご両親やご兄弟も相続人となります。
・子供がいる場合は、配偶者と子供が相続人となります。
家の購入、退職
「財産が大きく変化する」ため遺言書を残す方が多い傾向にあります。
・不動産という大きな財産のためローンの有無、同居人などにも左右されます。
配偶者をなくした時
「相続関係が大きく変わる」ため遺言書を残す方が多い傾向にあります。
・配偶者がいる場合はあまりトラブルになりませんが、配偶者がいない場合、子供だけが相続人となるとトラブルになるというケースが多くあります。
様々な環境に応じて遺言書作成のタイミングを決めること
円満な相続にするためにも元気なうちに遺言書の作成を一度考えてみてはいかがでしょうか。
急増する遺言書の作成の件数
遺言書を作成する件数が現在とても増えてきています。
具体的な件数は以下の表をご覧ください。
暦年 |
遺言公正証書作成件数 |
平成21年 |
77,878件 |
平成22年 |
81,984件 |
平成23年 |
78,754件 |
平成24年 |
88,156件 |
平成25年 |
96,020件 |
平成26年 |
104,490件 |
平成27年 |
110,778件 |
平成28年 |
105,350件 |
平成29年 |
110,191件 |
平成30年 |
110,471件 |
平成21年と平成30年を比較すると約1.4倍と上昇しています。
これらの数字から、遺言書作成の件数は今後も増加すると考えられています。
遺言書作成件数の増加の背景としては、遺産相続をめぐる争い(争族)があると言われています。
ではなぜ争族が増加しているのか。
兄弟姉妹感の疎遠、長男相続への抵抗
子供たちが大人になり、子供が生まれるとなると疎遠になるという場合も多くあります。
そのため、事情を知らないまま相続が発生すると今までの不平不満が募り、もめることにつながります。
また長男相続ということに抵抗感を覚える人も少なくありません。
現代の流れとして、兄弟平等を受け入れることが出来ないという人も少なからずいるため争族が発生してしまいます。
権利意識の高まり
年齢が若ければ若いほど、「自分」に重きを置きます。
家の存続のために「自分」を殺すという考えが希薄な今、企業のオーナーなどとは違い財産が大きい不動産などは分配が難しいため個人個人の主張が強くなります。
そのため争族が発生します。
いかがでしょうか。
実際遺言を作成した方が多いのは70代以下の方が多く、理由も様々です。
残されたご家族や親族がもめないように遺言を若いうちから作成することはとても重要となります。
この記事を担当した司法書士
トラスティ藤沢司法事務所
代表
山脇和実
- 保有資格
司法書士、宅地建物取引士
- 専門分野
-
相続・遺言・生前対策・民事信託・不動産売買
- 経歴
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司法書士事務所での10年の経験を経て独立し、トラスティ藤沢司法事務所の代表を務める。「相続は、亡くなった方の思いを推し量ろう」、「相続は、和をもって尊しとなすが大事」、「完全無欠な平等は不可能、遺産分けは互譲が必要」をモットーに、依頼者の内にある悩み要望を推し量り、顧客満足に繋がるよう努めている。また、勤務時代を含めて担当した相続・売買案件は3000件以上に上り、相談者からの信頼も厚い。